2023年10月26日付
アフリカ・スーダンの首都ハルツーム。市街地で写真を撮影しようとカメラを左手から右手に持ち替えた瞬間だった。いきなり近くにいた男に腕をつかまれた。「なにするんだ」と言い、その手を振り払おうとしたが、男は離そうとしない。さらに抵抗しようとしたが、私と男を多くの人々が取り巻き、「なんだ、なんだ」と言い始めたので、これ以上の騒ぎになると収拾がつかないと判断し、おとなしく連行された▼車に乗せられて着いた場所は警察署。私の腕をつかんだのはシークレットポリスと呼ばれる私服警官だった。取り調べまでには時間があり、その間にスーダン人の優しさがよみがえって心に余裕が出た▼同国へ入国する前、隣国のエジプトに2カ月間滞在し、アラビア語で簡単な自己紹介を覚えた。取り調べの冒頭、「アナ イスミー タカ(名前はタカです)」などと切り出してみた。「外国人がその国の言葉で話せば相手の心が和むはず」と思ったからだ。案の定、取り調べ担当の警官は笑いをこらえた▼その後の調べは簡単に済んだ。同国では写真を撮る場合、撮影許可が必要だった。私は”撮影未遂”。申請の手続きをした後、釈放され、元の市街地まで車で送ってもらった▼大手の新聞各紙には連日、紛争地からの写真が載る。撮影の陰にはさまざまな苦労があるはずだ。自分が現場に立ったことを想像しながら写真を眺めている。