柳澤さん、音楽の持つ力語る 向陽高で講演

海外での体験や音楽への思いを生徒たちに語る柳澤寿男さん=下諏訪向陽高校
「バルカン室内管弦楽団(BCO)」の音楽監督を務める下諏訪町出身の指揮者、柳澤寿男さん(52)=東京都=が25日、同町の下諏訪向陽高校で音楽選択の1年生約20人を対象に講演した。11月27日に同町の下諏訪総合文化センターで同楽団によるコンサートが予定されており、学校側からの依頼で”特別授業”が実現。柳澤さんは「国・民族・宗教を越え、地球上の全員が地球市民-とのメッセージをもってコンサートを世界中でやっている」などと語った。
柳澤さんは2007年にバルカン半島(特に旧ユーゴスラビア)の民族共栄を願ってBCOを設立。09年にはコソボ紛争後初となる民族混成オーケストラによる歴史的コンサートをコソボ北部の地で実現した。15年からは毎年、ワールド・ピース・コンサートを世界各地で重ねており、11月の下諏訪でのコンサートもその一環。
柳澤さんは紛争で民族対立が高まり、治安も著しく悪かった当時のバルカン半島での演奏活動や生活を振り返った。戦争で身内を亡くした恨みから、銃を持って戦争したい-と言っていた楽団の男性が、コンサート後に「あんなことを音楽家が言ってはいけなかった。人に優しく生きたい」と語った言葉が今でも胸に刺さっている。「音楽が彼に何かしら届いたのかなと思う」と、音楽の持つ力を強調した。
民族が異なるBCOの楽団員同士はかつての敵同士だったが、会って一緒に音楽をやるうちに仲良くなっていったという。「会うことで相手が”普通の人”と分かる。文化で顔を合わせることは紛争予防になる」と信念を語った。
講演を聞き、生徒の一人(16)は「世界の紛争のことを知ることができた。そうした中でも(人を)音楽で動かせるのはすごい」と話した。