辰野町議の当選無効 本多氏「要件満たさず」
県選挙管理委員会は26日、今年4月の辰野町議選で当選した本多慶司氏が被選挙権の要件を満たしていないとして、当選を無効とする裁決をした。選挙期日まで連続で3カ月(1月23日~4月23日までの91日間)以上、町内に住所があったかどうかを調査し、この期間の本多氏の生活の本拠は町内にはなく、東京都江戸川区の自宅マンションにあったと認められるとした。本多氏が裁決に不服がある場合は、裁決書が告示される10月30日から30日以内に、県選管を被告として東京高等裁判所に訴訟を提起することができる。
選挙後、町選管に対して本多氏の当選について「住所要件を満たさず当選は無効」とする異議の申し出があったが、町選管は7月11日に「当選は有効」として棄却。これに対し、次点で落選した樋口博美氏が県選管に審査を申し立てていた。
本多氏は辰野町内の住民票上の住所地には居住しておらず、町内のホテルでの宿泊を基盤としていた。町内に本社のある会社の社長でもあり、町選管は「会社が経営する飲食店が首都圏にあるため東京のホテルにも寝泊まりしていたが、3カ月のうち25日間は辰野町内のホテルに宿泊していた」「町で生産された農産物などを首都圏の飲食店で使用・販売していたため、経済生活の起点は辰野町であり、引き続いて町に居住していたという要件を満たす」として、異議の申し立てを棄却していた。
県選管は町選管の弁明書、樋口氏の反論書、本多氏の意見、現地調査の結果などにより審査した。本多氏の立ち会いの下、辰野町内のホテルの宿泊台帳などで91日間の居住実態も確認。本多氏は東京の自宅マンションで54日間、辰野町内のホテルで21日間宿泊するなどしており、この期間の生活の本拠としての住所は東京都にあったとした。
本多氏への聞き取りでは、住所要件が必要であることは承知していたものの、住民票があれば要件が満たされていると考えていたという旨の回答もあったという。
県選管によると、市町村選管の決定を取り消して当選を無効としたのは、記録が残る1955(昭和30)年以来、初めて。73(昭和48)年に下水内郡栄村議選で1票差で落選した候補者が異議を申し立て、県選管の調査で当選が取り消しになった事例はある。