2023年10月29日付
これほど親しまれている駅は珍しいのではなかろうか。”岡谷市の西の玄関口”として長きにわたって地域住民に愛されているJR川岸駅。新駅舎に生まれ変わり、きょうから運用を開始する▼川岸駅は1923(大正12)年10月28日に開業した。100周年の節目に合わせた建て替えである。新駅舎は屋根の色や外観に大正時代に建てられた木造旧駅舎の名残をとどめる。木製の駅名標は製糸業で発展した岡谷市にちなみ、繭の形がデザインされている。新駅舎にも掲げる。思い入れの強い人も多かろう▼地元には「川岸駅を守る会」がある。駅完全無人化から続く環境美化活動として、駅前を花のプランターで飾り付けるなどの作業に取り組む。新駅舎の運用開始に合わせて、地域住民らでつくる実行委員会は「お祝いイベント」を企画した。当日は地元の芸能などにぎやかな催しで門出を祝う▼今年5月に開かれた旧駅舎の「お別れの会」。長く利用された駅舎を一目見ようと、大勢の人が訪れた。駅舎内には住民が撮影した開業当初や50周年記念式典の様子、塩嶺トンネル開通前に駅の線路を通過していた特急あずさの写真を展示。歴史と地域住民の愛着の深さを感じさせた▼お別れの会に参加した地元の男性は「小さい頃、旅行の始まりと終わりがこの駅だった。新しい駅舎へのわくわく感も大きい」と。この先100年、200年と愛されるだろう。