2023年11月2日付

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交通量の多い幹線道路。時計を気にしながら余裕のない表情で横断歩道の前に立っていると、ほどなく車の流れが止まる。帰宅の途につく人が増える時間帯。歩行者優先は当たり前ながらもドライバーの配慮に恐縮し、小走りで道路を渡った▼日本自動車連盟が今夏実施した「信号機のない横断歩道における自動車の停止率の全国調査」によると、長野県の停止率84.4%。8年連続の全国1位となった。全国平均の45.1%を大きく上回る独走ぶり。県民の一人として誇らしく思った▼全国でも突出した水準で首位を維持している現状について県警は「長年にわたる交通安全教育や啓発が県民の意識に浸透しているのでは」と指摘。確かに一朝一夕で成果が上がるものではないだろう▼「情けは人の為ならず」。恥ずかしながら学生時代「情けをかけても人のためにならない」と誤った意味で解釈していた。ある法話で「情けは巡り巡って自分のためにもなる」と諭されたのを思い出す。「自分のため」とは言え、決して「見返り」を求めない姿勢が大事らしい▼横断歩道では車が止まる。幼い頃からそんな経験を重ねてきた子どもたちは、きっと「止まる大人」に育っていくはずだ。自分がしてもらったことは他の人にもお返ししたくなるもの。強制されることなくルールが順守されるようになれば、結果的に大きな「見返り」を得たと言えるだろう。

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