2023年11月3日付
10年ほど前、担当していた自治体で、経済状況が厳しい家庭に学用品や給食などの費用を支援する「就学援助」を受けた小中学生の割合が1割を超えたことを知り、衝撃を受けた。今思えば「子どもの貧困」を実感するきっかけだった。今や7人に1人が貧困状態にあり、OECD加盟国の中で最悪の水準とされる▼大学に通う子どもの授業料や生活費の捻出に苦労し奨学金を借りてもらった父親の話も聞いた。今は学生の約半数が奨学金を利用する。平均で約320万円を借り、卒業後も生活を切り詰め、15年ほどかけて返済を続ける▼かつて経済大国といわれた、この国の現状である。賃金が上がらず、増える支出に家計が回らない。物価上昇が拍車をかける。多様な要因が指摘されるが、結果として社会のゆがみのしわ寄せが、子どもたちにも及んでいる形だ▼子どもの貧困は体験の機会を奪い、将来国の経済成長や社会発展の阻害要因にもなり得るとされる。全国こども食堂支援センターむすびえ理事長の湯浅誠さんは、だからこそ、社会全体で子どもを支える必要性を説く。「子どもたちに選択肢のある未来を」と▼きょうは「文化の日」。「平和と文化を重視する」日本国憲法が公布・施行されたことから定められた。すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する―。憲法に現状を照らし、子どもたちの未来に目を向けたい。