2023年11月6日付
富士山の良好な眺望を得られる地点として、国交省関東地方整備局の主導で2005年までに選定された「関東の富士見百景」。県内は六景9地点が選ばれ、うち四景6地点が北斎とも縁のある諏訪にある▼これらは取材でも通う場所で、昨年暮れは美しい山容を背に車の光跡を映し込める富士見町の中央道葛窪トンネル付近で、この秋は霧ケ峰・霧鐘塔付近で写真を撮った。各地点には「百景」の銘板が備わっている▼半世紀にわたり富士を撮り続ける諏訪市の河野満さん(76)が写真集を出した。霊峰・富士と、雲や月、光が織り成す一瞬を捉えた一期一会の風景写真を収録する。撮影地は山梨、静岡両県が主だが、高ボッチ高原などからも。地元からの景色を大切にしている▼空気が澄む晩秋から冬、とりわけ朝夕は力が入ると話す。冠雪して荘厳の美しさが際立ち、条件がそろえば雲海や朝霧に遭遇できる。低い位置から差す太陽光が神秘的な雰囲気を引き立て、時に奇跡的な1枚が撮れるのだと言う▼昨秋の小宮御柱祭で富士見町内の集落を回り、これまで知らなかった眺望地に出合った。三十六景や百景にとどまらず、人それぞれに気に入った眺めがある。間もなく立冬。富士山の世界文化遺産決定から10年の節目の年だった23年も残りわずかだ。私有地に入らないなどルールを守り、諏訪の地から、最も絵になる季節の富嶽を切り取っていきたい。