2023年11月9日付
3連休を利用して諏訪湖でヨットに乗った。十年ぶりのセーリングに緊張したが、風の力だけで水上を滑走する爽快感、自然との一体感はやはり格別だ。高原の湖に白い帆を上げて周囲を見渡せば、360度の絶景を独り占めにできる。ただ、岡谷市湊の湖畔にあった街路樹がほとんど伐採され、行き交う自動車や街並みが丸見えになっていることに驚いた▼諏訪湖では今、県と諏訪市、岡谷市、下諏訪町が湖周をぐるりと結ぶサイクリングロードの整備を進めている。岡谷市湊では自転車道路が完成して視界が広がり、諏訪湖や八ケ岳の眺望を楽しめるようになった。お気に入りのドライブコースでもあるのだが、諏訪湖側から見れば日常の喧騒が際立つ▼かつて白樺湖畔の廃墟ホテル問題を考えるシンポジウムで、講師を務めた大学教授がこんなことを言っていた。「景観を楽しむ建物や人間の行為が、周囲の景観を台無しにすることがある」。クルージングを楽しむ観光客、漁業者、釣り人、水上スポーツに励む人たち…。私たちは諏訪湖からの視線をすっかり忘れてしまっている▼景観は「ルビンの壺」に例えられる。左右対称の壺に見えたかと思えば、向き合う2人の顔に変わる。人間は二つを同時に見ることができない▼どこから見ても諏訪湖の美しい景観が損なわれないように。訪れた人々の憧れが、暮らす私たちの誇りになればと思うのだが。