2023年11月23日付

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「きっと今に、試験のない学校、テストのない社会がやってくるでしょう」。今から60年前、考古学者の藤森栄一は中学生向けの雑誌「中二時代」(旺文社)でこう予言し、詰め込み型の暗記学習や試験制度に警鐘を鳴らした▼石器や土器を集めるだけでは学問は始まらない、知識の記憶も「かけらを集めているだけ」。学問や人生で最後に頼りになるのは、社会に疑問を抱く「考える力だけ」だと断言した。何事にもとらわれず、純粋な学びの喜びに少年を導ける大人が今、どれだけいるだろう▼藤森の思想を育んだ諏訪市で、不登校の子の学習を評価する指針ができた。学校のテストも自宅やフリースクールで受けられるようになるという。進学したい子にとっては、行きづらい学校の評価も重要らしい。テストのない社会は遠い▼藤森が死の直前に記した「信州教育の墓標」(学生社)は悲壮感が漂う。「学校から師弟の情と学友の愛はまったく失われ、テストによる敵ばかりの集団に化し、学校なんておもしろくもない。学問なんてクソくらえ、ただ偉くなるために、学校へいくんだと、十人が十人いうようにし(中略)教育をしむけたのは、いったい誰なのかと聞きたい」▼不登校の増加は、考古学に情熱を燃やし、古人に思いをはせ、信州の自然を守る旅を続けた藤森の叫びではないか。藤森の没後50年。諏訪市博物館で企画展が開かれている。

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