縄文、諏訪信仰芸術に 新野さんプロジェクト

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アートコモンズのコンセプトを説明する新野さん(中)

ソーシャルアーティストとして活動する公共創造家の新野圭二郎さん(48)=東京都=が、諏訪地域を舞台に、縄文文化や諏訪信仰を取り込んだ芸術作品を生み出すプロジェクトを進めている。御小屋山へと続く茅野市玉川の美濃戸高原別荘に約1600坪のアートコモンズ「対話と創造の森」を構え、アーティストを招いて地域に息づく精神や伝統を吸収した芸術活動を後押し。人と自然の関係を再構築する場を生み出し、新たな文化や世界観の提示に挑戦している。

愛知県出身の新野さんは高校時代に環境問題を意識し、日本大学で空間デザインを専攻。卒業後、デザインの専門学校へ通ってから渡欧し、ベルリンで「社会彫刻」の概念を提唱したドイツの美術家ヨーゼフ・ボイス(1921~86年)について調べた。

帰国すると、28歳で東京都日本橋大伝馬町のビルをリノベーションして、起業。公立小学校内に郷土資料のアーカイブスを設置したり、地域密着の創作拠点を作ったりした。「江戸時代に最も繁栄した場所が当時、東京で最も衰退していた。そこを掘り下げると明治以降の矛盾や日本の基層にぶつかった」という。

「対話と創造の森」に新野さんが創作した「光の対話場」。1500年後まで森羅万象を映し続けることが可能という

■日本の歴史や文明見直す鍵

コロナ禍を機に、かねて日本の歴史や現代文明を見直す鍵になると関心を寄せていた縄文文化が栄え、諏訪信仰が残る八ケ岳山麓に「対話と創造の森」を創設。2021年11月、直径3丈6尺9寸(約11.18メートル)のサークルに白御影石の砂利を敷き、表面を研磨した長さ8メートル幅2.4メートルのチタンを鏡にした「光の対話場」を、十数年の構想を経て完成させた。

■「千鹿頭」映像作品に反響

22年度は改装した山小屋に、東京を拠点に活動するアートユニット大小島真木さんが滞在。古代から諏訪に伝わる千鹿頭神信仰をたどる中で、縄文図像学の研究者だった故・田中基さんと出会い、神社や自然を訪ねた様子をまとめた映像作品「千鹿頭CHIKATO」を制作した。東京都調布市で今年10月から開催中の展覧会で紹介され、多方面から反響を呼んでいる。

新たな公共財(コモンズ)が重要になると考えている新野さん。「江戸からは語りえないことが、日本の信仰の原型に通ずる諏訪・八ケ岳に蓄積された人と自然との関係性の中にある」とし、「芸術家のみずみずしい感性で歴史の欠落を埋めた作品を生み出し、体験の場を開いて共有したい」と、さらなる展開に意欲を見せている。

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