2023年11月27日付

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「がんか認知症か、どちらになりたくないですか」。NPO法人やじろべー理事長の中澤純一さんは演台から直球を投げた。「2人に1人ががん、85歳以上の2人に1人が認知症にかかる」と示す▼端的な問いに聴衆は一瞬たじろいだ。講演の話の流れから頭で理解したつもりでも、心の準備はそう容易ではない。「あなたなら?」と問われたらひるんでしまう。それは中澤さんの狙いでもあったのだろう。「苦しみや悲しみ、切なさを自分事として」と訴える▼認知症は脳の損傷した部位で障がいが異なるという。例えば視覚に失認があると白い茶碗に盛った白米が見分けられず、「私にはご飯がない」となる。見えないのに「よく見ろ」と叱られ、記憶がないのに「忘れたか」と責められる。そのつらさを問われて気づく▼ご飯の見分けがつかない障がいには「梅干しを一つ乗せれば白米が見える」そうだ。作業の取り掛かりを手伝えば大概のことは自力でできるとも。だが、障がいを正しく理解せずに「出来ない」と決めつけ、周囲が手を焼き、叱り、患者も周囲も苦しむ状況がある▼認知症に限る話ではないだろう。自分にない不自由さや苦難を理解するのは家族でも難しい。社会、政治となればなおさらだ。まずは相手の困難さと原因を知る。そうすると「出来るようにするには」と相手中心の前向きな思考になる。真の支援はそこにありそうだ。

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