2016年12月28日付

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1年間の感謝やご無沙汰のわびを、短い文でいかに伝えようか。賀状を前に言葉選びの難しさにうなる。丁寧過ぎては他人行儀。とはいえ新年には折り目正しさもほしい▼少しは気の利いた言葉がないかと考えあぐね、「なまじ良く見せようと見栄を張るから悩むのだ」などと自分をたしなめたり。乏しい単語をあれこれ並べてみた揚げ句、陳腐な言葉に落ち着いてしまうから嘆かわしい▼企業が選ぶ流行語大賞で、入園待機児の母親が発した「日本死ね」が入賞し、物議を醸した。「言葉が社会を動かした」のが選定理由という。言葉の威力を示す象徴のような話だが、1年のまとめが「死ね」ではさもしい。「結果良ければ手段は問わず」の社会でよいのか▼こうした荒っぽい訴えは行政や企業につきもの。住民や消費者のいら立ちが高じて怒鳴ったり、連日押し掛けたり。問題意識が正当でも、訴えの度が過ぎれば被害を与える側になりかねない。富士見町では苦慮の末、庁内へ防犯カメラをつけて対抗に出た。住民のために働く現場が住民と戦わざるを得ない状況は残念だ▼北風と太陽が旅人の服を脱がそうと競う童話がある。北風が躍起になって冷たい風を吹き付けても、旅人は襟元をきつく合わせるばかりだが、太陽が温かな光を注ぐと自ら脱ぎ始めた。仏教には「和顔愛語」という行がある。人生が修行なら、愛で心を動かす言葉を使いたい。

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