2023年12月13日付

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その土地の気候や風土に適し、特徴的な味と形、香りを持つ伝統野菜。県は2006年に認定制度を設け、一定の基準を満たしたものを「信州の伝統野菜」に選んでいる。これまでに認定を受けた野菜は83種(3月現在)。貴重な食文化を次代につなげる取り組みが各地で行われている▼木曽地域や伊那谷で栽培されてきた「あかたつ」もその一つ。里芋の一種だが「ずいき」と呼ばれる茎の部分が主役だ。漬物は島崎藤村の小説にも登場するらしい。初めて食べた酢漬はシャキシャキした食感が心地よく、はしがとまらなくなった▼取材のために木曽郡南木曽町を訪れた。栽培するのは地区の有志でつくる岩倉むらおこし組合。同町では1987年、生産者の減ったあかたつの復活を目指す取り組みが始まったが、関係者の高齢化により継続を断念。2014年に同組合が生産を引き継いだ▼活動を支えてきた組合員たちの平均年齢は80歳ほど。あかたつの茎は「皮をむく作業に手間がかかって大変」といい、将来的には「今のメンバーだけではやっていけない」と存続の不安を口にする▼環境や時代の変化に対応できないものは淘汰(とうた)される。ビジネスの世界では当たり前の認識だが、「伝統」は残すべきものなのだろうか。「残したい」と思う人が増え、自然に残っていくものが「伝統」かもしれない。ずいきの漬物をかみしめ、そんな思いを強くした。

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