大道芸人ゴンベエさん さようなら公演で引退

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風船芸のパフォーマンスで「ゴンベエさん」として親しまれる矢野正貴さん。17日の公演で引退する

「ゴンベエさん」として親しまれるバルーンアートの大道芸人矢野正貴さん(76)=伊那市西町=が、17日に南箕輪村で開かれる「さようなら公演」を最後に引退する。「風船遊劇団ゴンベエワールド」を主宰し、笑顔や喜ぶ姿を見たいと県内外のステージに立ち続けて25年。地域を元気づけてきた大道芸の大ベテランが活動に終止符を打つ。

◆52歳でバルーンアートデビュー◆

「おー」「すごい」。11月中旬、伊那市役所で開かれた年長園児向けのイベント。破いた新聞紙を元通りにしたり、細長い風船を組み合わせて竜を作ったり。矢野さんが繰り出す手品や風船芸に、子どもたちや保護者から歓声が上がった。終盤には引退を報告。公演のお礼に園児から花束を受け取ると、涙ぐんだ。

伊那市の生まれ。家業の靴店を継いだが、40代後半で廃業。育ち盛りの子ども3人を養うためアルバイトも経験した。バルーンアートとの出合いはその頃。ピエロに扮した女性の風船芸を、幸せそうに楽しむ親子の笑顔が目に入った。瞬間的に思った。「これからやっていくことは、笑顔を大切にしていくことだ」

独学後、権兵衛峠にちなんだ芸名でデビューしたのは1999年。52歳だった。当初は10分も持たなかった公演は、「風船芸だけでは飽きられてしまう」と手品などを習得して20分、30分と時間が伸びていった。当時について「こんちくしょうとの思いで進歩できた」と振り返る。

2011年には、以前から思い描いていた「日本一周・風船大道芸の旅」へ。県北部地震で被害を受けた下水内郡栄村を皮切りに、東日本大震災の被災地を含め45都府県を7カ月かけて軽ワゴンで回った。飛び込みで保育園や街中などで公演。触れ合いの中で「人間って本来、温かくて優しさを持っているんだ」と感じた。

◆県内外でステージ 中学生と交流も◆

伊那中学校の文化祭で生徒とともに作り上げたバルーンアートの龍=2015年10月

この他にも、活動を通じて知り合った大道芸などの仲間を市内に招いての「大道芸フェスタ」を企画。15年の伊那中学校(同市)の文化祭では生徒たちと、天竜川の龍を表現しようと、風船約2千個超を使って全長約30メートルの龍を作ったことも思い出深い。

コロナ禍では公演のキャンセルが相次いだ。これまでの活動を振り返る機会にもなり「風船とは違い、形に残るものを」と飛び出す絵本を新たに作った。ただ、近年は高齢となって、公演には「すごいエネルギーがいる」ように。元気なうちにけじめをつけるのもいい、と引退を決めた。

その時が迫り、公演中に子どもたちの笑顔を見ると涙が込み上げてくる。17日の最終公演は定員250人が既に埋まった。「今はそこに向けて全力」と矢野さん。今後はバルーンアーティストを育てる講座をできればと考えていて、「数えきれない人とのつながりを大切に、新しい歩みができれば」。

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