2023年12月20日付

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「喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます」。身内に不幸があったことを伝える年賀欠礼状(喪中はがき)が年々増えている。11月ごろから届き始め、今年は10枚ほどになった。薄墨や淡い色彩で花柄や山脈が描かれ、故人の名前や年齢、お礼の言葉が記されている▼生前お世話になり、葬儀に参列させていただいた方もいれば、初めて逝去を知る場合もある。私の成長を遠くから見守ってくれた叔母や、忘却の彼方にいた同級生の母親の名前もある。差出人に視線を移し、知人や友人、親せきの顔を思い浮かべる▼昨年9月に90歳で亡くなった下諏訪町の黒田良夫さんは晩年、長野日報で最も心して読む記事はお悔やみ欄だと話していた。一字一字丁寧に、時には声に出して読む。そして両手を合わせ、「ご苦労さまでした」と念仏を唱えるのが日課だった▼黒田さんは戦中戦後を同じ地域で生きた隣人に敬意をはらいながらも、変わっていく家族や社会を嘆き、鋭い眼光で憤りを口にする老人だった。新聞に載ることが死亡記事ただ一度という人の存在を、新聞記者は忘れてはいけないとも語っていた▼人の命には限りがある。それまでは大切な人の死を受け止め、生きていかなければならない。年が明ければ年賀状が届き、家族の笑顔が印刷されたはがきが並ぶだろう。その前に喪中はがきを見詰めて、優しかった人たちを心に刻んでおきたい。

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