2017年01月03日付

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正月の仕事始めは一番鶏が合図になったそうだ。といっても戦前の話。一番鶏が鳴くと起き、暗いうちから土間でわらをたたき、縄をなって神棚に供えたという。農家では当たり前のように何羽かのニワトリが飼われていた時代だった▼今はといえば、世間は見えるものだけでなく、音やにおいにもうるさい。明け方の、まだ薄暗いうちからあの甲高い声で鳴かれたのでは風情どころか、近所迷惑になりかねない。卵や鶏肉の自給自足、残飯の処理、田畑の肥料の生産にも役立ったであろうニワトリだが、飼育の中心は養鶏業者の鶏舎に移った▼ときをつくるのは雄鶏、鳴き声は「コケコッコー」だと、大方の日本人は知っていると思う。だが、暮らしから飼育の現場が離れると、その鳴き声に出会う機会もなくなる。ひょっとしたら、じかに聞いたことのない人も多くなっているのではないか▼諏訪大社が今年の干支の酉にちなんだお守り「呼幸守」を授けているそうだ。鳴き声が包まれたようなネーミングで、紹介する本紙記事は、大社の説明として、「酉の鳴き声は幸運や開運を呼び込み、厄を払うとされる。新しい年が幸多きことを願うお守り」と記していた▼確かに、遠くまで響く雄鶏の鳴き声に神秘的なものを感じないわけではない。昔の人たちが一番鶏を仕事始めの合図にしたのにも、何かしらの願いが込められていたのかもしれないと想像した。

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