2024年1月17日付

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十二支の中で唯一、実在しない「辰」。空想の生き物で誰も見たことがないが、多くの日本人が同じ姿を思う。本紙新年号で紹介された「龍」がまさにそれ。諏訪社と諏訪大明神にまつわる縁起、諏訪社祭で構成される「諏方大明神画詞」を再現した書籍の中で諏訪市の歴史画家・折井宏光さんが描いた▼黒雲から姿の一部を現した諏訪の龍神様は東北の騒乱の鎮撫に向かう。目の鋭さ、色合い、美しさに心を奪われた。災いから日本を守る龍神様の姿に畏敬の念を覚える▼諏方大明神画詞は元々は絵巻物。著者は足利尊氏に仕えた諏訪(小坂)円忠。原本は所在不明で残る写本はすべて詞書のみ。現存しない絵巻物に描かれた空想の生き物を膨大な資料と知識の裏付けによって表現したというのだから大変なご苦労があったことだろう▼年が明けて寒の入り。諏訪湖畔では毎朝、御渡り(御神渡り)の観察が神事をつかさどる八剱神社の宮司、総代によって続く。かの絵巻物にも描かれた御渡り。出現の有無の記録は室町時代から続く▼観察総代が氷点下9.3度を確認した14日の朝、諏訪湖の西の空を貫く一筋の白い雲が現れ、見る見るうちに龍の姿になった。頭は遠くに見える常念岳を覆うかのよう。東の空に昇った日を拝んでいると、いつしか龍は姿を消していた。常念岳の先にある北陸に向かったのだろうか。どうか被災地の皆さんを救ってください。

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