2024年1月22日付

LINEで送る
Pocket

年末から小正月に掛けて、縁起物を手作りするわら細工教室を立て続けに取材した。古民家で黙々と手仕事に励む参加者たち。しなやかな稲わらの感触を確かめながら作業に熱中する姿はどこか楽しげで、非日常の時間を満喫しているようだった▼稲作の歴史とともに育まれてきたわらの文化。米づくりの副産物として発生する大量のわらを活用し、かつては草履や敷物、雨具などの生活必需品が手作りされていた。その技術は親から子へと受け継がれ、今日に至る▼地域の暮らしに根付いた知恵や技術を次世代に伝えよう―。農業の機械化や安価な石油製品の登場により、存在感を失いつつあるわら細工に光を当てた教室が各地で開かれている。講師は80歳以上の高齢者がほとんど。技術の継承に時間的余裕はない▼「必要な物は作らないとなかった時代。自分で工夫して何でも作った」。伊那市高遠町の教室で講師を務めた牧野晃さん(91)は自身の小学生時代を振り返り、技術は「生活のため」と強調した。日々の暮らしに息づいてこその伝統。残すも消すもすべて私たち次第なのだろう▼教室には自発的に参加した高校生の姿も。「自分で作れるようになりたい」。家に自作のわら製品を飾るのが目標という。廃れつつある物に新たな価値を見出し、生活に取り入れていくことも伝統継承と言えよう。作り手だけの問題ではないのだと改めて実感した。

おすすめ情報

PAGE TOP