「二之丸騒動」題材 大久保さん小説の完結編

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高島藩のお家騒動「二之丸騒動」を題材にした小説「天然流指南」を手にする大久保さん

時代小説家の大久保智弘さん(76)=茅野市=が高島藩(諏訪藩)のお家騒動「二之丸騒動」を題材にした長編時代小説「天然流指南4 女人の秘事」を発刊した。江戸に道場を構える武芸者「酒楽斎」と個性派ぞろいの高弟たちが諏訪の騒動に巻き込まれていく物語のシリーズ第4巻はいよいよ完結編。酒楽斎が諏訪に入り、二之丸騒動に至った背景を大久保さんの視点で解き明かしていく。

第5回時代小説大賞の受賞作家で数々の作品を世に送り出してきた大久保さんが、コロナ禍をきっかけに活動の拠点を出身地の茅野市に置き、執筆を進めてきた。同シリーズは「古里への恩返し」の意味を込めた作品で、江戸の宿場町で起きた美女殺しの事件がきっかけで騒動に巻き込まれていく展開を通じ、外部の視点から二之丸騒動を見詰める。

作品では、長年、高島藩を支えてきた二之丸諏訪家、三之丸千野家の両家老家の派閥争い「二之丸騒動」の原因を、当時の藩の財政状況や逼迫した理由など、多角的な視点で解き明かす。

黒曜石を採掘した狩猟の民が行った狩猟祭祀が始まりとされる諏訪信仰と縄文時代から続く諏訪地方の歴史を作品の登場人物が語り部となって紹介していく場面は、諏訪の歴史を知らない人でも物語の背景が分かるように工夫した。

小説とはいえ、諏訪地域に残る古文書や文献、資料を読み込み、自身で確かめた史実に基づいて物語を構成しており、地元住民にとっても参考になる内容だ。

主人公の酒楽斎は、二之丸騒動の原因をある実在する神社に残る古文書から考察していく。二之丸騒動は決着を見るが、それを勝者の歴史としない大久保さんは「諏訪大助、千野兵庫の2人が立ち向かっていた困難は同じだった。やり方が異なっていただけのことで、困難の原因が続く限り、結果は同じだっただろう」と述べ、同作でも同様の趣旨のせりふを登場人物に語らせている。

「時代小説は単にその時代の物語とするだけでなく、現代に通じるものの考え方がなければならない」とする大久保さんは、二之丸騒動を取り上げることで増え続ける国の借金を将来に先送りし、正面から財政問題に向き合おうとしない日本の政治に警鐘を鳴らそうとした意図を込めた。

独裁色が強かった江戸前期と合議制へと変わっていった江戸後期の政治体制の転換点についても言及し「諏訪では二之丸騒動がその境目であったのだろう」とした。

文庫本。販売価格は990円(税込み)。二見書房刊。28日午前10時からと午後1時から諏訪市末広の古書店「言事堂」でサイン会が行われる。

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