2024年1月29日付

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信州から月までの距離は約38万キロ。諏訪市の光学機器メーカーnittoh(ニットウ)が開発、製造したカメラ用レンズが20日、月に到達した。直径24ミリ、長さ34ミリ、重さ40グラムという小さなレンズが今この瞬間も月面にある。映り込む光は荒涼とした月の世界か、輝く太陽か、暗闇に浮かぶ青い地球だろうか▼レンズは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機「SLIM(スリム)」に搭載され、昨年9月7日に鹿児島・種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた▼日本初の月面着陸から5日後、JAXAは世界初の「ピンポイント着陸」に成功したと発表した。数キロから十数キロだった着陸地点の誤差を、55メートルの高精度で達成したという。人類の惑星探査を「降りたい場所に降りる」へと導く日本の快挙だ。2基ある主エンジンのうち1基を失いながらも、ニットウのレンズは月面を捉え続け、機体の制御に貢献した▼同社の原点は明治、大正期に諏訪地域で勃興した製糸業だ。諏訪市湖南の本社には大正期の事務所棟が現存する。戦時下にレンズ加工に大転換した。戦後の混乱期に独自設計した「コミナーレンズ」は地名の湖南に由来する。最先端企業だが、諏訪の風土と進取の気性、勤勉努力が似合う「グッドカンパニー」である▼久しく空を見上げることもなかったけれど、冬の諏訪湖に映る月にスリムを見たような気がした。

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