2017年01月07日付

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「雨やどり」で軟弱、「関白宣言」で女性蔑視、「防人の詩」で右翼…デビュー以来のヒット曲に対する世間の反応を、歌手さだまさしさんは以前、こう語っていた。作り手の思いとかけ離れて受け止められるのは作品の宿命である。勝手ながら社会派のイメージが強い▼「償い」という歌が発表されたのは35年前。レコードで初めて聴いたとき、それまでになく重い内容で心が沈んだ。交通死亡事故の加害者となった「ゆうちゃん」は月末になると郵便局へ向かう。貯金が趣味だと仲間に笑われながら、実は被害者の奥さんへの送金だった。7年目に初めて届いた手紙には許しの言葉がつづられていた▼事故は仕事の途中、雨の日の夜。暮らしは暗転し、加害者になる怖さ、被害者の苦しみが胸に迫る。当たり前だが、車は凶器にもなる。忘れがちな事実に改めて気付かされ、聴き終えると背筋がピンとする。警視庁は、運転免許の違反者講習で、この歌を流しているそうだ▼昨年全国で起きた交通事故の死者数は67年ぶりに4000人を下回った。今のように車が普及していなかったころのレベルにまで減少した。一方で県内は前年より52人も多い121人。1月に軽井沢町で起きたスキーバス転落事故の多数の犠牲者を考慮しても事態は深刻だ▼「たった一度だけ」の「哀しい誤ち」が当事者や周囲を不幸にしてしまう。歌の力も借りて事故をなくしたい。

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