2024年2月12日付

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時代小説家の大久保智弘さん=茅野市=の作品づくりは史料を徹底的に読み込むところから始まる。「歴史を知らずに書けば読者の信頼を失う」からだ。もう一つ大事にしているのが現代社会への警鐘。「時代小説には現代に通じるものの考え方がなければならない」と語る。温和な表情がキリっと引き締まる▼最新の長編作「天然流指南」シリーズが完結した。江戸時代中期の高島藩で起きたお家騒動「二之丸騒動」を取り上げ、その背景を江戸の武芸者が探っていく。善悪がはっきりした派閥争いと認識していた騒動の裏側が浮かび上がる▼二つの家老家の争いの元をたどると、藩の財政問題に行き着く。ひっ迫する財務状況の中でどのように政を執るか。両家老家の政策を第三者が客観的な視点で見つめていく。勝者の歴史の中で埋没した別の一面が浮かび上がる▼裏金問題で見えにくいが、国債頼みの予算編成が続き、国の借金は昨年末時点で前年末から30兆円近く増えて過去最大に。地方でも財政状況の悪化が続く▼トップが身を正さずに民に質素倹約を強いるのか、今を楽しみ、将来に回すツケをさらに膨らませるのか。難しいかじ取りは百も承知でありながら「だから仕方ない」では済まされない。大久保さんは完結編である人物にこんなセリフを言わせている。「困難が続く限り、すべてが間違っていたといわれても、返す言葉はないでしょう」。

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