2016年3月13日付

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学業を終え、この春から社会人としての一歩を踏み出す若者たちは、この時期、期待よりも不安の方が大きいかもしれない。入社前の研修で息切れし、「この先やっていけるだろうか」と頭を抱えていたうん十年前の自分の姿を思い出す▼新年度に入ると、新社会人を対象にした講習会が各地で開かれる。職場での電話対応、名刺の渡し方、来客への応対などなど、学ぶべきビジネスマナーは幅広い。何度か取材におじゃましたが、その都度気づかされることも多く、自分を省みる機会にもなっている▼フレッシュマンに贈られることも多い「初心忘るべからず」の言葉は、能を大成した世阿弥の著書「花鏡」に記されている。ここでの「初心」とは技量の未熟さを指す。芸を身につけるために経験した苦労や未熟さを忘れてはならない―と、慢心を戒めているのだ▼と、わかった風なことを書いたが、これは観世流二十六世宗家の観世清和さんの著書からの受け売りである。観世家元は、「初心」を忘れるということは、もはや自分を高める動機を感じなくなるということだと指摘している。芸道を極めるための極意なのだろう▼仕事でも何でも、ここで終わりということはない。つまり、経験を何年積んだとしても初心を忘れてはいけないということになる。新入社員を迎えるこの時期は、先輩たちにとってもわが身を振り返る絶好の機会と言えるだろう。

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