向山雅重の記録写真 伊那図書館が公開

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新たに設置された棚の前でアルバムを広げる竹入弘元さん

宮田村出身の民俗学者、向山雅重(1904~90年)が撮影した約2万枚の記録写真が、伊那市伊那図書館2階の一般図書室で閲覧できるようになった。主に伊那谷の昭和20~50年代の人々の暮らしや伝統文化、農村風景などの白黒写真で、資料的価値が高いとされる。向山さんの研究資料を整理し解散した「向山資料保存会」から2005年に寄贈された。昨年12月末まで閉架図書として保管していたが、来館者が目にしやすい場所で公開。保存会員らは「多くの人に活用してほしいという遺志が通じ、向山先生も喜んでいると思う」と話す。

向山雅重は上伊那地方の小中学校で教師を務める傍ら、民俗研究を志し、伊那谷を中心に県内各地で調査活動を行った。民俗学者柳田国男、地理学者三沢勝衛らから教えを受け、柳田国男賞(1970年)などを受賞した。

写真は目録、追補を含めて約210冊のアルバムに収めた。向山さんの教え子らが86年に保存会を発足させ、遺族から預かった野帳などノート約280冊とともに、白黒フィルム650本を長年かけて整理してきた。

写真には稲作や馬耕、機織り、農閑期の俵作り、民家、わらじ、着物、祭りなど当時の農家の生活が写し出されている。郷土史研究家で、保存会の代表代行を務めていた竹入弘元さん(85)=同市荒井=は「(撮影日時・場所も合わせて)克明に記録され、資料的価値が高い」と評価する。向山さんと親交があったといい、「農家に生まれた向山さんは、当時の主な仕事であった農業と、地域や職業によって作り方が異なるわらじに興味を持ち、調べていた。晩年になってから民俗行事にも力を注いだ」と語る。

記録写真の閲覧は、保存会が地道に整理を続けた成果が大きい。保存会によれば、預かったフィルムは一こま一こま感光度が異なり、中には傷付いた物もあったという。写真に詳しい会員の故・土屋愛子さん=南箕輪村=が夜、自宅の洗面所を暗室代わりにし、一こまずつ調整しながら全てのフィルムをキャビネ判写真に引き伸ばした。ほかの会員は、フィルムやその袋に記載された撮影年月日・場所、被写体名などを、野帳の記録と照らし合わせて目録を製作し、写真を日時順にアルバムに収めた。

整理に携わった会員の丸山輝子さん(76)=荒井=は「先生の字は細かく、略字もあり、古文書を解読しているよう。小さな字をみんなで話し合って解読し、非常に大変だった」と懐かしんだ。

竹入さんらは「実際に現地に赴き、その土地で暮らす人を記録した貴重な写真。後世の人にぜひ見てもらいたい」と期待する。同館の酒井淳一館長は「伝統や昔の暮らしが失われていく中、当時の生活を知る良い機会になる」と話している。

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