迫る御柱祭[第3部]ひと模様 6、山﨑秀友さん

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諏訪大社下社御柱祭の山出しで、最大の見せ場となる木落し。岡谷市湊の氏子たちが曳き建てを奉仕する「春宮四之御柱」は、8本の先陣を切り、一番最初に急斜面に挑む。

坂の状態はどうか。御柱の動き方は、角度は、スピードは―。「ほかの柱の氏子にとっても注目度は高いはず。安全かつきれいな木落しにつながるよう、御柱と呼吸を合わせて、一発でスパッと追い掛け綱を切断したい。全神経を集中して臨むつもりです」と斧を握る手に力を込める。

御柱には子どもの頃から父親に連れられて参加した。高校生になると自ら進んで小綱を握り、1992年からは地元祭典委員会の一員として奉仕。98年には「ハナ乗り」を務め、以降も元綱や梃子の副責任者となって汗を流した。

今回、斧取りで追い掛け綱を切る役目を「やってみないか」と相談された際、「しばらく考えさせていただきたい」と猶予をもらったという。「ハナ乗りの大役を経験させていただき…後は、春宮四之御柱と地域に尽くしたいと考えていたので」。

若い頃から御柱に関わった経験上、伝統と安全に関わる曳き建ての知識や技術を、より若い世代へと伝えていく重さを感じていたからだという。御柱祭は7年目ごとに一度。何度経験しても、次に迎える大祭にはまたいろいろな課題が浮かぶ。「多くの先輩から教わり、自分で経験したことが、これからの湊の御柱に役立つなら」。経験の継承が役割の一つ―。そんな思いで迎えたのが、今回の御柱祭だったと振り返る。

追い掛け綱を切るという、新たな役割を担って臨む2016年の御柱祭。斧取りを経験した先輩に指導を仰ぎ、練習は2月から開始 。本番と同じ綱を重機2台で固定して木落しの場面を想定し、一振りで切断できるよう練習している 。「天候、御柱の動き、曳き子の力加減など多様な要素で綱の高さや、揺れ方が変わるはず 。条件は予想できないので、とにかく集中です」。

斧には「奥山の大木 里に下りて神となる」の木やりを刻んだ。「長い伝統を持つ御柱祭。敬う心。祈り、支え合う心の原点を忘れないように」。その経験を、次代へと引き渡す。斧に込める願いは一つ。「安全で楽しく。氏子の思い出に残る祭りになってほしい」。

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