2017年04月04日付

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この季節が好きだ。新入社員が職業人として新たなスタートを切る。新しい世界に飛び込んでくる若者たちの希望と不安、そして覚悟。こちらまで気持ちが引き締まる。きのうは多くの会社で入社式が行われた▼岡谷市出身の童画家、武井武雄の幼少期にこんな逸話が残る。3歳のころ、屋根に立てかけたはしごに登ってみた。ちょうど諏訪湖の向こうの山に太陽が沈んでゆく。武雄はびっくりして「お日様がなくなってしまう」と、大泣きして祖母を困らせた。長女三春さんの著書にある(「父の絵具箱」)▼大人になれば笑い話で終わる体験だが、武雄はいつまでも大事にした。自然に対する幼児の新鮮な驚きと発見。後年、この体験を思い出しては、「『俺よ、老いるな』と自分を励ますのだ」と話していた。だからこそ、90歳近い生涯の最後まで作品を送り続けることができた▼昨秋、安倍首相は働き方改革について、「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本に」と発言した。確かにモーレツ社員全盛の時代は長時間労働がはびこっただろう。しかし終身雇用と退職金・年金で一生面倒をみてもらえる時代でもあった▼新入社員世代がこれからたどる人生の労働環境はどうなるだろう。従来とは違った意味で厳しいものかもしれない。だが若い時分に経験した驚きや感動、失敗が今後の財産になることは間違いない。いつまでも大切にしてほしい。

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