2017年05月04日付

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〈人いまだ生れざりける日に水素酸素を恋ひて水成れりけり〉。国立天文台名誉教授の海部宣男さんの著書で知った石川啄木の歌を引用した。「よく星を見、星をうたった」啄木の関心は、自然の成り立ちにも及んでいたと解説にあった▼日々の暮らしには縁のない化学式だが、「H2O」は耳目に触れることがある。生命が誕生するはるか昔、原初の地球で水素(H)と酸素(O)が出会い、恋をして水が生まれた│とロマンチックな想像が広がる。「水の惑星」の地球には、命が満ちあふれている▼地表に大量の液体の水がある水惑星は、太陽系では地球以外に見当たりそうもない。が、木星や土星の衛星のいくつかには、氷の大地の下に海があると考えられているという。液体の水があれば、生命体の存在への期待が高まる。発見は意外に早いのかもしれない▼その有力候補が土星の衛星エンケラドスだ。太陽から遠く離れたこの天体は厚い氷に覆われているが、土星の引力の作用によって衛星内部が熱を持ち、氷の下には液体の水をたたえた海が存在する。氷の割れ目から、海水が間欠泉のように噴出しているのだという▼米航空宇宙局(NASA)の調査で、エンケラドスの表面から噴き出すガスの中から水素分子が検出された。「生命を育む環境が存在する可能性が高い」とニュースが伝えていた。歌人のように想像力の翼を広げ、朗報を待ちたい。

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