2017年05月07日付

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季節によって時間は変わるが、岡谷市内では夕方、「琵琶湖周航の歌」のメロディーが流れる。同市湊出身の小口太郎が旧制三高在学中に、琵琶湖を見ては故郷の諏訪湖を思い作詞した。三高の寮歌・学生歌として広まり、戦後は多くの歌手に歌われた▼思わず口ずさみたくなる出だしは、「われは湖の子 さすらいの」。湖を「うみ」と歌うところに小口の郷愁がにじみ出ている。それは諏訪湖の周りで生まれ育ち、今は離れて暮らす人々も同じ思いなのだろう▼同市出身で姫路市在住の小説家、柳谷郁子さん(80)が「諏訪育ち-姫路にて」(第三文明社刊)を出版された。柳谷さんが主宰・編集長を務める文芸同人誌「播火」に2001年から昨年まで連載した53編の巻頭エッセーを収めている▼この中に「われは湖の子」と題した一編がある。諏訪湖浄化運動に携わった経緯から昨年、岡谷図書館に蔵書の一部を寄贈した評論家の森田実さんの自伝的エッセー「一期一縁」にある同題の「われは湖の子」を読んだことが執筆のきっかけだ▼今度は柳谷さんの一編が、いわく「お読みくださった方から方へリレーを経て(中略)思いもよらないまさに物語のような経過」で森田さんにつながり、同書に帯文を寄せた。そこに「美しい文章は諏訪湖の自然と姫路城の人造美が調和」とあるように、柳谷さんの故郷への思いがそこかしこに散りばめられた1冊。

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