2017年06月17日付

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評論家の秋山ちえ子さんは雨の日を「私の手紙の日」とした。慌ただしい日々の中でせめて雨の日くらいは机に向かう。〈心に浮かぶあれこれを、思い切り書いて綴れば、心晴れて少々、人心地のつける〉とエッセーに書いている▼雨といっても降り方はさまざま。夕立なども含めては手紙を出す回数が増え、受け取る方が迷惑だろうと考えた秋山さん。2時間以上降り続いた日を「雨の日」と定め、制限した(「雨の日の手紙」文春文庫)。それでも梅雨どきは小まめに筆を執ったことだろう▼長い手紙もいとわず書いたのは夏目漱石だ。〈小生は人に手紙をかく事と人から手紙をもらふ事が大すきである〉と門弟への手紙に記している。さすが文豪、私信である手紙も広く公開され、文学作品同様、100年たった今でも読み継がれているのだからすごい▼メールに交流サイト(SNS)と人をつなぐ手段は多様化し、手紙やはがきの出番は少なくなっているようだ。そうした需要の減少も背景に、はがきの郵便料金が今月1日、52円から62円に引き上げられた。消費税増税以外の理由での値上げは約23年ぶりだという▼お世話になった人、しばらく会っていない友人に自筆の手紙を書きたいと思いながら、いつまでたっても筆不精のままだ。雨の日とはいかなくても、年に何回かは手紙の日を設けてもいいかなと思う。切手と便箋選びから始めてみようか。

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