資源回復への道 諏訪湖ワカサギ大量死1年―1

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湖岸に打ち寄せられた大量のワカサギの死骸=昨年7月27日、岡谷市湖畔

昨年7月26日朝、諏訪湖でワカサギが大量に死んでいるのが見つかった。打ち寄せた死骸は湖岸を埋め尽くし、異様な光景が広がった。それからまもなく1年が経過しようとしている。「あのような事態はもう二度と起きてほしくない。起こしてはならない」。諏訪湖に携わる多くの人がそう願っている。一方で対策が進まないことに、不安を募らせる人もいる。1年間の軌跡を追った。

「ワカサギは湖上からはほとんど姿を見ることができない魚。それが水面に浮き上がり、弱々しい。その桁違いの多さはありえない光景だった」。昨年7月26日朝、漁師歴40年以上の藤森重利さん(60)=諏訪市豊田=は異変の日をこう振り返る。大量死の光景を見て言いようもない不安に襲われた。「ついに来たか。諏訪湖が終わってしまうのでは」。目から涙がこぼれ落ちた。

ワカサギ、コイ、フナの死骸回収量は同31日までに2・5トンを超えた。春の採卵資源の確保に向け、諏訪湖漁業協同組合は秋のワカサギ漁を断念。諏訪湖釣舟組合は同漁協などとの話し合いの結果、水、木曜を休業日とし、釣果の上限を設定した。しかし、今春、産卵のため流入河川に遡上する親魚はほとんどなく、採卵はできなかった。受注していた全国の湖沼への卵供給は不可能となり、逆に諏訪湖への放流分を購入せざるを得ない事態となった。

7月の大量死を受けて県は8月3日、学識経験者でつくる「諏訪湖環境改善に係る専門家による検討の場」(有識者会議)を諏訪市内で開いた。今年3月30日までに県庁などで計4回開催。ワカサギの大量死や今後の対応について検討した。湖底の貧酸素水の塊が湖の表層まで上がり、ワカサギが酸欠した可能性が高いとしたものの、大量死の原因は特定されなかった。

貧酸素による湖内の酸欠の懸念は以前から漁師も研究者も強く感じており、学会や講演会などを通じて発信もしてきた。貧酸素問題の解決には「水を動かす必要がある」と長年諏訪湖で魚を取り続けてきた藤森さんも、かつて県水産試験場諏訪支場(下諏訪町)の支場長を務め、研究者として諏訪湖を見つめてきた武居薫組合長(66)=岡谷市山下町=も口をそろえる。異なる経歴の二人が同じ見解に至っている。

諏訪湖漁協によると、藤森さんが本格的に漁を始めた1975(昭和50)年ごろ、年間の魚介類の漁獲量は年400トンあった。それが93年には170トンに減り、昨年はわずか13トン余に落ち込んでいる。藤森さんは「諏訪湖の治水工事は湖の水の動きを抑えている。水は動かなければ淀む。死んだ水になる。矢板による護岸工事を見直し、伏流水によって水の動きをつくるなどして諏訪湖を生きた水にしないといけない」と指摘。武居組合長は「諏訪湖は今、生き物が生きるには大変過酷な環境にある」と語る。

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