2017年08月06日付

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景観には過去と現在をつなぐ力があるのだと思う。街並みや風景と言った方がいいのかもしれないが、それが写真や模型であっても、特徴的な姿が記憶を呼び覚まし、懐かしく話をさせることがある▼伊那市通り町の伊原商店フリースペースで「伊那まち商店街 62分の1ミニチュアの世界」展が始まった。元小学校教諭の小平和夫さんが制作した90棟を超えるトールペイントの木製置き物で、ミニチュアの商店街が再現されている。記憶の呼び覚ましに火をつけたのは、デパートの屋上にあった観覧車だった▼小平さんによると、見る人の多くが語るのはそのビルの5階にあったレストランのこと。なぜかそこでクリームソーダを飲んだことを思い出すらしい。おいしかったのか、印象的な味だったのか、家族や友人とひとときを過ごした思い出を楽しそうに話してくれるのだそうだ▼展示したミニチュアの商店街は今の建物の姿を忠実に再現したものだったが、昔あったものを少し加えただけで記憶のスイッチが入る。おそらく、そのときを一緒に過ごした家族や友人の顔、声、出来事までも思い出すきっかけになるのだろう▼暮らした時代によって刷り込まれる記憶の対象は違うものだが、楽しい思い出とともに心に残る街並みや人とのふれあいは、ふるさと回帰の動機にもなろう。街中が祭りで盛り上がる夏。そんな記憶に残るような瞬間になればいい。

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