廃止や見直しの動き 諏訪地方転機の集団登山

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諏訪地方の中学2年生が八ケ岳連峰を目指す集団登山が転機を迎えている。富士見中学校(富士見町)は今年度、過密傾向の学校行事を見直す過程で集団登山を廃止した。日常の生活や授業に集中できる環境を整え、生徒の成長につなげる判断だが、集団行動や達成感、郷土の自然を体験する集団登山には教育的な効果があると継続する学校もある。あす11日の「山の日」を前に、集団登山の現状と課題を取材した。

■時代とともに目的にも変化

諏訪地方で集団登山が始まった時期は定かではないが、諏訪教育会の1949年の記録には「中学生徒の八ケ岳・蓼科登山のしおりの編集、教師用の手引きを編集する」とある。集団登山の目的は、時代の流れとともに学術登山、体力錬成、団体行動の訓練、自然との対話へと移り変わってきたという。

現在は中学2年生を対象に、7月を中心に1泊2日で行われる。目的地は硫黄岳(2760メートル)や根石岳(2603メートル)で、茅野北部中が唯一、主峰・赤岳(2899メートル)に登る。行政や学校の予算で看護師や登山ガイドが配置され、住民や保護者の有志が同行する学校もある。

今年度は今後の予定も含めて1500人余りの生徒が入山し、教職員約145人と看護師・登山ガイドら37人、地域ボランティア10人が同行した。生徒7~8人に大人1人が付き添う計算になる。

集団登山を廃止した富士見中は、学校行事が多く、準備に追われて「ついていけない生徒が出始めていた」。集団登山の継続を求める教職員もいたが「どんな子を育てたいのか」の観点から学校行事全体を精査。スキー教室や終日の総合的学習などとともに集団登山の廃止を決めた。

年間の登校日数が4日減の205日となり、夏休みは10日ほど増えたという。集団登山に充てていた時間のほとんどをキャリア教育の充実に振り向け、生徒は地域の人の話を聞き、自分なりのテーマを持って職場体験に臨んだ。保護者にも賛否両論あるが、曽根原好彦校長(52)は「学びは深められている」と話す。

■日帰り化含め検討の学校も

長野日報の取材に対し、ほかの学校の大半が集団登山を「継続」すると回答した。一方、日帰り化を含めて「検討中」とした学校が6校ある。教育的効果は認めつつも、生徒対応の多様化や登山初心者の教職員増加、安全面・危機管理面の不安などから消極的な意見もあるようだ。

諏訪教育会が60年にわたって発行を続ける集団登山のガイド本「八ケ岳」の編集を担当する、登山の栞委員会の鮎沢克好委員長(56)=岡谷東部中教諭=は「八ケ岳は山小屋が多く登山コースのバリエーションも豊富。集団登山ができる環境にある」とし、「一度やめると再開に相当なエネルギーがいる。できる範囲で八ケ岳に触れてほしい」と願っている。

集団登山は梅雨明け前後に行うため、雨に降られて「山が嫌いになる生徒が多い」とも言われる。八ケ岳観光協会は、小学生以下の子どもの宿泊料金を無料にする「八ケ岳キッズプロジェクト」を2015年から始め、八ケ岳の自然や登山の魅力を伝える取り組みを進めている。

山小屋関係者は取材に対し、「営業的には続けてもらいたいが、集団登山の是非を決めるのは学校。先生たちが議論して決めたことを否定するつもりはないが、成長にはプロセスがある。集団登山に代わる教育的効果がどんなものか注目している」と語った。

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