2017年08月15日付

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ズシンと腹に音が響き、浴衣のたもとが揺れる。諏訪湖上花火大会の迫力を表わすとこんな感じだろうか。「ドドドッ」と立て続けに開く大輪の花々に、観客が息を飲む▼ある年、それを眺める人の中に「戦時中はこんな感じだったか」とつぶやくのが聞こえた。かつては「花火の光や音は空襲が思い出されて怖い」と話すお年寄りも少なくなかった。毎年、祭りに活気づく観光客の波の中で彼らの声を思い出す▼諏訪湖の花火は第二次大戦の終戦からわずか4年後に始まった。市民に明るい希望を持ってほしいとの願いからだという。夜空のきらめきを人びとはどのような思いで見上げたのだろう。平和を取り戻した安どか、暗い世に見いだした光だったか▼あれから1世紀も経たずして、世界はミサイルの発射に揺さぶられ、安全が脅かされている。国内では戦跡の生々しさや、戦争のむごたらしさを語る声が薄れるばかりだ。今日は終戦記念日。湖上の花火は、命と引き換えに今を残した先人へ感謝を込めた鎮魂の送り火でもあろう▼花火は江戸時代から大人気で鑑賞のほか、天変による飢饉や疫病ばらいに打ち上げた歴史もあるそうだ。4年前の大会はひどい荒天になり、祭り史上初めて中止を余儀なくされた。近ごろは天の機嫌も不安定で怒ると恐ろしい。それに混み合う市中で事故も増える。花火にはこうした脅威からの無事も願いを託したい。

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