たった1人の舞踊部員 岡谷東高の山口さん

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唯一の部員として日本舞踊部の活動に取り組む山口さん

伝統をつないでいきたい―。岡谷東高校(岡谷市)3年の山口舞さん(18)=同市加茂町=が、同校の日本舞踊部で、唯一の部員として稽古に取り組んでいる。二十余年前に、同校卒業生で歌舞伎俳優の市川笑野さん(38)が創部したが、来春以降に部を担う後輩がいない状態。山口さんは「ずっと続いてきた部がなくなったら寂しい」と部の存続を強く願い、踊り続けている。

「さくら、さくら弥生の空は見渡す限り」。今年7月の高校体験入学で、山口さんの演目「さくら」が教室に流れた。来校した中学生に向けて、部活動をアピールしようと舞を披露。立ち寄った中学生はわずかに1人だけだった。「同年代に興味を持ってもらうのはなかなか難しい」。それでも「何もやらなかったら、誰も来ないから」。額に汗をにじませ、時間いっぱい踊り続けた。

同日には、市内で笑野さんの記念公演があった。部の現状や後輩の取り組みを耳にし、「良い舞台を見て吸収し、一人の表現者として伝えほしい。その姿から部員が増えるのが理想」と笑野さん。「自分も広い世代に受け入れられる役者でありたい。お互いに頑張っていかなければ」とエールを送った。

笑野さんは在学中に、日本舞踊師範として部の指導も務めていたという。笑野さんの母親で、師範の藤間微豊華さんが後を引き継いで、生徒を指導してきた。最高時は10人ほどが所属していたが、近年は減少。昨春に休部の危機に陥っていると知った山口さんが「名前にも『舞』が入っているし、自分がやろうと直感的に入部した」という。

県高校文化連盟によると、日本舞踊部は全国的にも珍しい部活動という。顧問の百瀬文子教諭は「特殊な分野。経験者となる教員や指導者がいないと活動は難しい」とし、休部を懸念。「ここで伝統が途切れてしまうのは惜しい」としている。

日本の伝統美に関心がある山口さんは、華道部にも所属しながら週1回の稽古を重ね、練習着の浴衣も一人で着られるようになった。これまでのあでやかな舞とは趣向を変えて、勇ましい武士をイメージした「題黒田節」で舞を磨く。藤間さんは「若いから覚えが早く、筋がいい」と目を細める。

「卒業してからも、日舞を続けていきたい」と山口さん。残された高校生活はあと半年ほど。自身が踊り続けることで触発を受けて「一人でも入部してくれたら」と望みをつないでいる。

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