2017年09月10日付

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〈鎌倉が先生の本拠地だとすると、小津組の第二の故郷は、蓼科です〉。俳優笠智衆さんが自著「大船日記」に書いている。先生とは映画監督小津安二郎のこと。監督は晩年、茅野市の蓼科高原を仕事場とし、数々の名作を送り出した▼小津監督を蓼科へと導いたのは盟友の脚本家野田高梧だ。野田の山荘「雲呼荘」を小津監督が初めて訪れたのは1954年8月のことだ。この地には小津映画には欠かせなかった笠さんら俳優陣をはじめ、戦後日本映画の黄金期を担った映画人たちが集ったという▼酒好きでもあった小津、野田コンビ。ちょくちょく山荘を訪ねたという笠さんは、ずらりと並んだ酒瓶を見て「酒屋さんの裏みたい」と驚いたという。蓼科の自然と酒を愛し、人情深い地元民とも交流を深めた映画界の巨匠。このゆかりの地で毎年開かれるのが「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」だ▼1998年から始まり、16~24日に行われる今回は20回の節目。開催期間を例年の2日から9日間に延長した。期間中は「東京物語」など小津監督の5作品を含む29作品を上映する。小津映画に出演した女優の司葉子さんや岩下志麻さんらゲストの顔触れも多彩だ▼小津映画のこころのふるさとの地で、小津の名を冠した映画祭を20年にわたって続けてきた関係者の思いと情熱には頭が下がる。映画ファンの裾野が広がり、映画文化振興にもつながってほしい。

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