2017年10月08日付

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昭和30~40年代に下諏訪町長を務めた黒田新一郎さんは自動車の草創期に運転を経験した人の一人だ。軍隊時代に抜てきされ、1918(大正7)年、旧陸軍の自動車隊創設にかかわった。教官として初年兵に運転を指導したが、まだまだ自動車の運用は手探りだったことを回想していた▼翌年出兵したシベリアで、こんな笑い話が残る。極寒の地では自動車の冷却水がたちまち凍る。困った黒田さんは、アルコールに甘味のグリセリンを混ぜて不凍液にした。これがみりんのような味で、酒に飢えた兵士が夜中にこっそり抜き取って飲んでしまったという▼現代の自動車は電子制御され、大して手入れをしなくても丈夫に走ってくれる。モーターを組み合わせたハイブリッド車はもちろん、低公害の電気自動車(EV)も珍しくなくなった。自動運転技術も進んでいる▼一方で自動車への環境規制が厳しくなり、先ごろの国際自動車ショーでは、メーカーのEV化への動きが一段と加速した。世界最大の市場である中国は、エンジン車の生産・販売を禁止する検討に入ったという。自動車業界は今が最も激しい変革期かもしれない▼初期の自動車に苦労させられた黒田さんは1975年に発刊した回想録で、目覚ましい自動車の発展に「隔世の思いがする」と書いている。それからさらに40年余り。自動車の歴史は人間の技術や知恵の結晶であることが分かる。

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