2016年04月12日付

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「天下第一の桜」と称される伊那市高遠町の高遠城址公園のタカトオコヒガンザクラが満開となり、先週末から観桜客でにぎわっている。赤みが強い花が特徴で、9日の弊紙に掲載された上空写真は、ピンク色に染まった城址公園が美しかった▼旧藩士が明治8(1875)年、廃城した高遠城址に桜の馬場から移植したのがタカトオコヒガンザクラの始まりとされる。さかのぼること戦国時代、高遠城を治めていた武田信玄の五男、仁科五郎盛信が率いる武田軍三千が、多勢の織田軍に攻められて壮絶な死を遂げた時に散った血の色が桜に映る│と、花の赤みと美しさを説く言い伝えもある▼この言い伝えは、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という冒頭で知られる梶井基次郎の短編小説「桜の樹の下には」にも通じる▼桜のあまりの美しさが信じられず、不安な思いにかられる俺。桜の樹の下に屍体が埋まっていると想像することによって不安から解放される。「今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする」▼先日、深夜に車を運転していて、白くぼうっと浮かび上がった満開の一本桜に驚いた。道端に咲く、日ごろから見慣れた桜だったが、深夜という時間も重なってか、怖いほどに美しかった。美しさと怖さ、生と死の表裏一体が、あちらこちらにあると感じさせられる桜の季節。

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