2017年10月30日付

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線路を暴走するトロッコ。その先には5人が作業をしている。分岐器を切り替えれば助けることができるが、そちらにも作業員1人がいる。5人を助けるために1人を犠牲にすることは許されるのか▼有名な倫理学の思考実験「トロッコ問題」である。トーマス・カスカート著「『正義』は決められるのか?」(かんき出版)ではこの問題を題材にした事件が「世論の法廷」で裁かれる。検察、弁護士、大学教授らさまざまな立場から「正義」が語られる▼「最大多数の最大幸福」という功利主義に立てば犠牲者を最小限にしたことは正しいとする一方、犠牲になった人にも人生があり、生命を他人に奪われない権利があるといった論争が繰り広げられる。いずれの主張も一理あり、深く考えさせられる▼この倫理的ジレンマにどう向き合うか。自動運転に絡めてしばしば取り上げられる。プログラムはあらゆる事態を想定して作られるのだろうが、簡単ではなさそうだ。人間にも難しい問題を人工知能は解けるのだろうか▼ドイツでは自動運転のバスが運行を始めたというニュースがあった。ハンドルはなく、運転手はいないそうだが、緊急事態に備えて職員1人が乗っているというから、まだ完全に”手放し”というわけにはいかないようだ。技術的な問題はいずれ解決されるだろう。科学技術の行き着く先はどのような世界か。期待と不安が入り交じる。

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