2017年11月06日付

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戦争画といえば、頭に浮かぶのがパブロ・ピカソの「ゲルニカ」だ。今から80年前、スペインの小都市ゲルニカの無差別爆撃を題材に、描かれた。節目の今年は、日本の被爆者も参加して現地で追悼式が行われた▼当時のスペインは内戦状態で、反政府勢力側を支援するナチス・ドイツが爆弾の雨を降らせた。空襲直後に描かれたという「ゲルニカ」には、子どもの遺体を抱く女性や、兵士の遺体、死に掛けた馬などが表現された▼一方、こちらの戦争画は血なまぐさくはないが、多くを語りかける。下伊那の阿南町出身で、県内の中学校などで美術教師を務めた画家、飛矢崎眞守さんの「レイテ突入」だ。1944年10月、フィリピン・レイテ島沖で行われた海戦直前の静かな海を描いた。12日まで阿南町民会館で開く遺作展で展示している▼海軍に召集された飛矢崎さんは重巡洋艦の乗組員として、史上最大の海戦といわれるレイテ沖海戦に参加した。乗艦は撃沈されたが、洋上を漂流して幸運にも救助された。作品はそれから26年後の1970年になって発表された。戦う前の青い海を、日米の将兵はどんな思いで見つめただろうか。想像すると胸が痛くなる▼戦争を始めるのは人間だ。その圧倒的な暴力によって、同じ人間や動物が犠牲になる。そして美しく青い海までもが、血と砲煙で損なわれていく。二つの絵はそのことを強い力で訴えかけてくる。

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