2016年04月14日付

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今にもポツポツきそうで、何とか日中は傘の出番がなかった昨日のような空模様を、降(ふる)とまで人には見せて花曇-と詠んだのは、伊那谷を漂泊した俳人井上井月だ。青空に映える満開の桜もいいが、曇り空の下の花もしっとりとした風情がある▼季語の「花曇」は、辞書によって語釈に多少の違いはあるものの「桜が咲くころの曇り空」のこと。手元にある「実用新国語辞典」(三省堂)は和英辞典を兼ねており、英訳はcloudy weather in early spring▼桜に寄せる思いや文化の違いが良く表れている。「花曇」は日本人の季節感や言葉に対する感性の豊かさを示す好例だろう。それはそのまま俳句という文化につながる。五七五の17文字にすべてを込める▼伊那市教育委員会が制作した小学校高学年向けのテキスト「伊那の井月さん」を、挿絵を担当した漫画家の橋爪まんぷさんから頂いた。一読して、率直にすばらしい副読本だと感じた。井月の生涯と遺した俳句をわかりやすく紹介し、俳句や季語も解説している。井月について学ぶと同時に、子どもたちをごく自然に俳句学習へと導いてくれそうだ▼テキストに収録された井月の句の中には、高学年の児童には理解が難しい句もあるかもしれない。それでも、繰り返し音読することで句の解釈はともかく、言葉に対する感性が磨かれていくのではないか。そんな期待も抱かせてくれる。

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