2017年11月24日付

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「今年は見事な出来だね」と畑でホクホクしながら見守っていた白菜が、生育半ばというのにたる一杯の漬物になって食卓に上がった。虫に食われて収穫せざるを得なかったと嘆く母。家庭菜園でさえこれだもの、自然相手の仕事はつくづく難しい▼富士見で捕獲した鹿から基準値を超える放射性物質が検出された。偶然の1頭なのか、富士見にとどまる問題か。野生獣の行動範囲もつかみきれていないだけに疑念、不安の闇は深い▼出荷販売の自粛を余儀なくされた町内の獣肉加工業は、そもそも営利が目的で始まったのではない。駆除して山中に捨て置かれる命に胸を痛めた猟友会の有志が事業を立ち上げた。駆除、消費のサイクルを回すため、「鹿肉はおいしくない」イメージを払おうと、高鮮度で良質な肉を得るために捕獲の報が入れば真夜中でも解体に汗している▼その努力の積み上げで飲食店からの引き合いが増え、加工技術の高さも全国で評価されている。町内で鹿の食害が減った成果の一因でもあるという。「信州ジビエ」の一翼を担うまでに育った中で今回の件は町、県全体にも大きな痛手だ▼ただ、食肉の健康被害にばかり目が向きがちだが、放射能汚染は大地、野生動植物全体に影響を与えており、鹿はその連鎖の一つに過ぎないことを忘れてはならない。この遠大な問題にどう向き合うのか。課せられた責任の重さを改めて知る。

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