2017年12月02日付

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「わらはお米の親じゃもの」という俚謡があるそうだ。稲わらは日本人の主食たる米を育てた特別な存在。もみを取った後も大切に使えば、いろいろな役に立つ。そんな意味だろう▼考えてみれば、昔から人の生活はわらに支えられてきた。古くは家の中で敷物などの素材となり、外に出てはミノやわら靴として荒天から人の身を守った。屋敷の北風を防ぐ風よけや、ぬかるんだ道を歩きやすくするわら敷きなどは、20~30年前まであちこちで見かけた▼時代とともに薄れゆく風景でもある。農業離れがあって、代わりとなる新しい建材や素材が出回って。もちろん、現在の方が使い勝手はいいし、長持ちして便利なわけだが、わらのような温かみには欠ける。見られなくなってきたのは何か寂しい▼そのわらが目立つ季節になった。公園などの樹木にわらを束ねた帽子が乗り、寒さよけになった。木の幹には編んだわらが巻きつけられる。代表的なのは正月を飾るしめ縄だ。お年寄りが作業所などで作るわらのより合わせを見ると、心が和む。瑞穂の国に生まれた者ゆえだろうか▼八ケ岳山麓の茅野市で、住民が稲わらを積んだ昔ながらの「にょう」を今年も作ったという記事を読み、見に出かけた。やや長細いスタイルのにょうは田園地帯に映え、師走入りで慌ただしい気持ちを落ち着かせてくれた。昔懐かしい情景は癒やしの効果があると実感した。

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