2017年12月13日付

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そのニュースに触れるたびに「なぜ?」という言葉が口をつく。神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件。被害者は10~20代の若者。自殺願望があったという。前途ある若者たちがなぜ死に引き寄せられてしまったのか▼高橋弘希さんの小説「日曜日の人々」(講談社)は自傷や不眠、摂食障害などに苦しむ人たちの自助グループを舞台にした物語。社会に適応できず、生きづらさを抱える人々。座間の事件の予言的な小説という見方もある▼自殺した従姉から届いた日記。その死の真相を求め、あるグループに関わるようになった「僕」は自死を選ぶ人々を見送りながら自身も次第に死に取り憑かれていく。登場人物から語られる言葉は生々しく、社会の暗部を見せられたような思いになる▼幼少期の心の傷だったり、自責の念だったり。抱える闇はさまざまだが、それが心の中を支配し、死が頭をもたげる。その苦しみはなかなか外から見えないから、残された人々もまた困惑する▼座間の事件では、容疑者が「本気で死にたいという人はいなかった」という趣旨の供述をしているという報道もある。被害者たちはただ相談相手がほしかっただけではないか。だとすればあまりに悲しい最期である。専門家は相談窓口の充実を訴えるが、それで事足りるとは思えない。スマホに居場所を求める若者にどう寄り添っていくか。重い課題である。

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