2016年04月18日付

LINEで送る
Pocket

今年のグランプリに選ばれた繭クラフトは、埼玉県の松本時惠さんの作品「小布施の秋のあじさい」だった。葉っぱ、がく、小さなつぼみに至るまで繭を使っているらしい。自然がつくる色を再現するための染色も巧みで、本物のように見えるからすごい▼駒ケ根市東伊那の駒ケ根シルクミュージアムで、2016まゆクラフト作品展が始まった。9回目の公募展に集まった作品は71点。館内には入賞作品はもちろん、応募全作品が並んでいる。小学校の児童たちや福祉施設利用者らの共同制作もある▼どの作品も繭の形や特徴を生かしていて、蚕が作った繭層を薄く剥がしたり、貼り付けたりしている工夫が面白い。小さな繭クラフトを組み合わせ、立体や平面の造形美を作り上げているような感じだ。繭細工というより、美術工芸品と呼んだ方がいいのかもしれない▼同館で繭クラフトを始めた頃の話を、名誉館長の岩下嘉光さんから聞いたことがある。ご高齢の来館者からは「この貴重な繭を造花や人形にするとはけしからん」と叱られたそうだ。養蚕に暮らしを支えられ、繭一つ一つを大切にしてきたからこそ口に出たのだろう▼養蚕農家は激減している。繭の生産がなくなれば養蚕の技術や文化もまた失われると思えば、繭クラフトが作られる意義や、わずかながらでも蚕を飼い続け、その素材を提供する同館が果たす役割を理解できそうな気がする。

おすすめ情報

PAGE TOP