2017年12月21日付

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澄み切った夜空に、冬の星座の代表格、狩人オリオンが威風堂々と輝いている。目印となる三つ星が中央に並び、太陽の数万倍明るいとされる若き星リゲルと、赤みを帯びた老星ベテルギウスが右下と左上の対角線上に君臨している▼明治生まれの天文随筆家で、冥王星の和名命名者として名高い野尻抱影は、息をのむほどにスケールの大きなこの星座が特にお気に入りだった。一糸乱れぬその雄麗な姿を毎回見せてくれることに感謝し、〈大自然の名匠が造った最高傑作〉だと随筆に書いている▼山岳に憧れ、八ケ岳や南アルプスの山上でも夜空を眺めている。そこから見える星々は手に取れるようで、李白の詩「手を挙げて星辰を捫づ」という句が誇張でなく思い出される―とつづっている(「星は周る」平凡社)。星空に抱かれている感覚だったのだろう▼山岳県で空気も美しい長野県は「天文スポット」に恵まれ、各地で観測会も催されている。駒ケ根市では、標高2600メートルを超える中央アルプス千畳敷の満天の星空を、観光素材として売り出す取り組みがある。ボランティアガイド「星空案内人」も養成している▼〈音みなのしづみ果てたる山の夜や聴けば聴かゆる地球自転の音〉中村正玉爾。地球が回る音が聴こえそうな静寂の中で、静かにめぐる星をめでる。せわしい毎日の中で、ときには「星が捫でられそう」な場に身を浸してみるのもいい。

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