2018年01月04日付

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若者は都会を目指す―。インターネットで世界が狭くなった今でも、それは変わらないだろうか。昨年、文部科学省が東京23区内にある私立大学の定員増を2018年度以降認めない方針を打ち出した。若者の「東京一極集中」を是正する目的らしい▼「若者は都会の魅力に対する憧れが強く、地元のありがたみに気付きにくい」。昨年11月に伊那市で行われたまちづくりの意見交換会で、参加者からこんな発言があった。東京は政治経済の中心のみならず、時代を先取りする文化や風俗の発信地でもある。その刺激が魅力的なのだろう▼元日の本紙統合版によると、今、地方で頑張っている作家が多いそうだ。昨年夏の芥川賞は盛岡市在住の沼田真佑さん、直木賞は佐世保市在住の佐藤正午さんだった。人気作家のあさのあつこさん(岡山)や伊坂幸太郎さん(宮城)らも地方在住だ▼文芸評論家の榎本正樹さんは「地方の作家の方が、政治・経済も含めた中央や全体のさまざまな問題点が見えやすい」と指摘する。芥川賞の沼田さんも東京はみんなが「東京人ぶる」から地方の人の方が「多様」だと言う。中心から離れているからこそ、見えてくるものがあるのだろう▼東京一極集中の一方、ネット社会の進展で、地域の個性が失われたという嘆きも聞く。だが、地方在住作家の活躍は、むしろ地方こそが多様な文化の発信源になりうることを教えてくれる。

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