北原式鉄線蛇籠に焦点 語りつぐ天竜川の新刊

LINEで送る
Pocket

「語りつぐ天竜川」の新刊「三峰川で生まれ育った鉄線蛇籠」を手にする北原富美子さん(右)と調査課職員

国土交通省天竜川上流河川事務所が発行する冊子「語りつぐ天竜川」で、63巻目となる新刊が約5年ぶりに発行された。焦点を当てたのは、かつて洪水被害が多発した最大支流の三峰川沿いで開発された治水構造物「北原式鉄線蛇籠」。1890(明治23)年に現在の伊那市美篶青島に生まれ、土木技術者として活躍した「北原式」開発者の北原繁雄を主役に据え、治水に力を尽くした生涯や開発秘話などを紹介している。

同事務所(駒ケ根市)調査課の職員2人が、長男嫁の富美子さん(92)=美篶青島=に取材し、挿絵や資料、写真を入れてまとめた。30日、伊那市役所で白鳥孝市長に冊子を贈った椎葉秀作所長は、繁雄について「伊那市、伊那谷の偉人と言ってもいい」と報告した。

蛇籠は竹や鉄で編んだ筒状の籠に大きな石をぎっしりと詰めた構造。並べて堤防護岸として用いたほか、丸太を三角すい状に組んで川の勢いを抑える「牛枠(聖牛)」の重りにした。繁雄は、長さ方向を縮めることができ、現場への運搬にも収納にも便利な北原式を考案。工夫を施して断線にも強くし、美篶青島の三峰川沿いに工場を設け、職人の手で製作していった。

繁雄が立ち上げた河川工事の専門会社「北原組」が、旧陸軍・伊那飛行場の建設にかり出されていたことも、今回の取材過程で見つかった繁雄直筆の書から判明したという。

冊子には、振りがなの付いた物語風仕立ての文章や、聖牛の模型づくりの工作ページも組み入れ、子どもたちも楽しめる内容にした。

「素晴らしい文章でまとめていただいた。生涯かけて堤防を守ってきたおじいちゃんも天国で喜んでいると思います」と富美子さん。「いつ起きるか分からない災害。読んでいただき、防災の気持ちを受け継いでもらえればうれしい」と望んでいた。

A5判88ページ。約700部印刷した。うち約500部を上下伊那地方の図書館や小学校などに贈り、残りは同事務所や伊那出張所、三峰川砂防出張所、飯島砂防出張所などで希望者に無料で配布する。事前の連絡が必要。問い合わせは同事務所(電話0265・81・6415)へ。

おすすめ情報

PAGE TOP