後藤哲也さん最後の監修は「勾玉野天風呂」

LINEで送る
Pocket

後藤さんが手掛けた野天風呂について語る柳平さん

無名の時代が長く続いた熊本県の「黒川温泉」を全国屈指の温泉郷に導き、1月22日に亡くなった後藤哲也さん=享年(86)=が人生の最後に監修した温泉が茅野市豊平の三井の森にある。八ケ岳縄文天然温泉「尖石の湯」の「勾玉野天風呂」だ。管理するグループダイナミックス研究所(東京都)社長の柳平彬さん(78)は「野天風呂は後藤さんの哲学・信念が生きた作品だ」と語る。

「尖石の湯」は2年をかけて造り、2009年5月に開いた。総合監修は国土交通省の「観光カリスマ百選」にも選ばれた老舗旅館元社長の後藤さんに依頼した。硫酸イオンがミネラルと結合してできた無機化合物の総称「サルフェート(硫酸塩)」が豊富という特徴がある源泉100%かけ流しの温泉。八ケ岳山麓から掘り出した安山岩を250トン以上使用し、コナラやクリなどの広葉樹を配置して「自然の中に湧き出た温泉」を表現している。

巨大な石もそのほとんどを地中に埋め、周囲の木々も樹種が偏らないよう、植える間隔にも気を使いながら造り上げた。柳平さんによると、後藤さんは「自然を自然として受け入れる」という哲学を尖石の湯で表現したという。監修中には、一時体調を崩し、諏訪中央病院(茅野市)にも入院したが、完成に向けた情熱は衰えなかった。

黒川温泉は四季を彩る樹木の配置にこだわり、景観も黒に近い色でそろえて統一感を演出。「道が通路、各旅館が小部屋であるような街並み」と評され、全国屈指の温泉郷となった。後藤さんは集客に苦しむ全国の温泉地への助言活動にも力を注いだ。晩年は「落ち着いたら家族でもう一度蓼科にいきたい」と言っていたという。

柳平さんは「後藤さんは日本にある日本らしさ、地域にある地域らしさをどう表現するかを真剣に追求していた。もし、もう一度茅野市を訪れてもらえたら、今の茅野市、そして諏訪地方が後藤さんの目にどう映ったのか。ぜひともお聞きしたかった」と在りし日を振り返っていた。

おすすめ情報

PAGE TOP