2018年02月23日付

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「物見遊山でもいいので来てほしい。それが復興につながる」。昨年、伊那市で開かれた東日本大震災の「3・11の集い」。「被災地を訪れても迷惑にならないか」。参加者からの問い掛けに東北地方の被災者が答えた▼もちろん被災地の状況をひとくくりにはできないが、何とかにぎわいを取り戻したいという切実な思いが感じられた。一方で、悲しみの現場に足を踏み入れることは被災者の心情を傷つけることにならないか心配になる▼世界中には戦争、災害、迫害、事故などさまざまな悲劇の舞台となった場所がある。そうした「負の遺産」を訪れる観光スタイルがここ数年、注目を集めているという。「ダークツーリズム」と呼ばれる。代表的な場所では第2次大戦中にナチス・ドイツによる大量虐殺が行われたポーランドのアウシュビッツや国内では広島の原爆ドームが挙げられる▼観光学者の井出明さんは「基本的に近代に通じる問題を含んでいる場所」(「ダークツーリズム入門」、イーストプレス)とし、「悲劇をどう継承するか」という視点が重要とされる。その意味で東日本大震災の被災地も該当するというが、観光の対象とすることには批判もある▼震災からの復興にはまだ時間がかかるだろう。記憶を風化させないことが重要なのは言うまでもない。現地に行くこともその一つだと思うが、被災者に寄り添う気持ちを忘れてはならない。

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