御柱祭を彩る5 「本宮三の建て方衆」富士見町境・本郷・落合

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丹念に集めたデータをもとに、安全性の確認を重ねる

丹念に集めたデータをもとに、安全性の確認を重ねる

「費用と人手を考えたら、容易に引き受けられる仕事ではなく、御柱祭に参加した経験もない」。富士見町で鉄鋼業を営む小林弘幸さん(52)は、建て方の依頼を断り続けた。

諏訪大社上社の「本宮三」を担当する富士見町の境・本郷・落合地区。前回までは建て方を町外の建設業者に頼んでいたが、今回は地元業者が力を合わせて当たる。

建て方長を引き受ける決心をしたのは約4カ月前。とび職人が少なくなる中で、「このままでは御柱祭を支える建て方がいなくなってしまう」との心配が頭をよぎった。「今まで家業に追われて地域への奉仕をしてこられなかった。せめてもの恩返し」│。そんな思いで意を固めると日頃付き合いのある同業や建設関係の仲間が応援に駆けつけてくれた。以来、寝る間を惜しんだ準備が続く。

「建設の経験に頼らず、安全性の確かな裏付けが必要」と、担当する御柱が決まる前から境内に何度も足を運び、測量を重ねた。御柱の傾斜角度によって、乗る人の体勢がどう変化するかを算出するため、医療用のパソコンソフトを頼り、さらには御柱に見立てた鉄骨に乗って「建て御柱」を再現し、乗り手の大変さを実感した。

これまでに描いた図面は500枚以上。各ワイヤと御柱にかかる荷重の変化を詳細に数値化したデータが、「今後の技術継承に役立てば」と話す。御柱が建つ直前の、穴に落ちる瞬間に生じる激しい衝撃を防ぐ安全策も考案した。

とはいえ心配は尽きず、夜中に布団をはねのけて図面を確かめる日が続く。仲間の今井正和さん(44)=今井建設=も「夢にまで出てくる」とプレッシャーの大きさを明かす。小倉淳さん(47)=小倉鉄工=は「道具の使い方、現場での動き、すべて熟知している必要があり、日ごろの現場経験だけが頼り」。

練習では小林さんが若い頃、病院や地下鉄の駅の建造で建て方を務めた経験が生きた。「ぶん殴られて体で覚えた技術と、御柱の役員や仲間から教わった知恵を融合させて」本番に臨む。

「御柱に皆さんの思いを込めて成功させたい」。『一柱入魂』。会社の門前に掲げたモミの大木に刻んだ文字に建て方衆40人の心意気が宿る。

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